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京都地方裁判所 昭和57年(ワ)221号 判決 1982年5月06日

原告

甲野太郎

右訴訟代理人

柴田定治

被告

野上満末

主文

被告は原告に対し金一〇〇〇万円およびこれに対する昭和五六年一一月二一日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文と同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、昭和五二年三月二八日甲野花子と結婚しその届出をした。

2  被告は、原告方の隣室(日光ハイツ二の一〇九号室)に居住していたが、昭和充六年一一月二一日原告が外出中原告方へ侵入し、甲野花子に対し同女の背中をナイフで刺しその上蒲団蒸しにするなどの暴行を加えて現金一四万円余を強取した。

3  甲野花子は右暴行により、背部刺創、頭部外傷Ⅲ型、左眼窩部打撲、左後腹膜出血、くも膜下出血、脳幹障書、ストレス胃潰瘍の傷害を負い、受傷直後蘇生会病院に入院して以来現在もなお入院中で意識不明の植物人間の状態であり回復の見込みは全くない。

4  原告は甲野花子の夫として同女の負傷により同女の看病やそれに伴う減収その他肉体的精神的損害を受けており、その慰藉料としては二〇〇〇万円が相当である。

よって、原告は被告に対し右慰藉料二〇〇〇万円のうち一〇〇〇万円およびこれに対する損害発生の日である昭和五六年一一月二一日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

全部認める。

第三  証拠<省略>

理由

請求原因事実はすべて当事者間に争いがなく、この事実と<証拠>を総合すると、甲野花子(昭和三〇年七月二四日生)は昭和五六年一一月二一日に受けた傷害により昭和五七年三月二〇日現在も入院加療を受けており、症状は半昏睡、鼻腔カテーテル栄養、カテーテル排尿の処置を受け植物状態にあり、今後の治療についても現状維持が精一杯で意識回復も困難な状況にあつて、また仮に意識が回復した場合の後遺症についても全く不明な状況であること、このような状態の中で花子の夫である原告は同女の身のまわりの世話その他一切の面倒を見ていかなければならない立場にあることが認められ、右事実によると原告の精神的苦痛は花子が死亡した場合の苦痛に比べても余りあるものというべきであつて原告の精神的苦痛に対する慰藉料を認めるのが相当である。さらに前記のとおり花子の被害状況と原告の受けた精神的苦痛の程度及び被告による暴力の動機、態様、程度等諸般の事情を考慮すると原告の請求しうべき慰藉料の額は一〇〇〇万円とするのが相当である。

よって、原告の被告に対する一〇〇〇万円およびこれに対する損害発生の日である昭和五六年一一月二一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、仮執行宣言につき同法一九六条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(吉田秀文)

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